2013年10月26日土曜日

人間は動物じゃない

「分類」を勉強するための読解問題に取り組んでいるとき、ちょうど「植物」という単語が出てきた。

ひらい「『生物』。これは何と読みますか?」
学生「せいぶつ!」
ひらい「そうですねー。生物に『植物』と『動物』があります。
これが『分類』ですねー。
植物には何がありますか?
木、草、きのこ…
動物には何がありますか?
犬、牛、カエル、魚…
『人間』も『動物』ですねー」

ここで、学生全員が爆笑。
キョトンとするひらい。

学生「先生、人間は動物じゃありません!」

ええーー?! 何ですと?

ひらい「人間は動物でしょ? 動物じゃなかったら何なの?」
学生「先生、人間は人間です」
ひらい「ええ?!! じゃあ、生物は、動物・植物・人間、ってこと?」

大きくうなずく学生たち。

ひらい「いやいやいや、ほ乳類…って言ってもわからないだろうけど、
ほら、サルとか…」
学生「(再び爆笑して)先生、人間とサルはぜんぜんちがいます!」

ええーー!
違うけど!!
違わないじゃん!!!

動揺しきったひらいに対し、学生は上から目線で
「日本では、人間は動物ですか?」と聞いてくる。
「日本では」っていうか、全世界的に人間は動物じゃないの?
なんで日本人だけ理性がないみたいになっちゃってるの?
おかしくない? おかしいよね?!

さて、この件があまりに衝撃的だったので、引き継ぎノートに書いたら
それを読んだウズベク人の先生が
「確かにウズベキスタンでは、植物・動物・人間、で習いますね。
学校の科目もそうなってるし」と言う。

そういえば、最近、ロシア語のレッスンで

Биология (生物学)
1) ботаника (植物学)
2) зоология (動物学)
3) анатомия и физиология (解剖学及び生理学)

なんて言ってたっけなあ。

同僚の先生は、イスラム教的にも、人間と動物は別だ、と。

さらにそれを聞いていた法律の先生も
「法律でも動物と人間は違いますよね。
動物には所有権とか権利がない。
むしろ植物と動物が同じで、人間が別。
社会主義も、人間と動物が違うということから出発してるでしょう?
資本主義では人間は動物だけど、社会主義では人間と動物は別なんですよ」
とおっしゃった。

宗教的にも、生物学的にも、社会学的にも
どの観点からもこの国では人間は動物ではないわけで
そこでガイジン教師が「人間は動物でしょう?」
って言ったら、確かに笑ってしまうだろう。

でも、人間だって動物だよね!

2013年9月12日木曜日

中央アジア弁論大会レポート

中央アジア弁論大会と、中央アジア各国の日本語教育事情について
先輩隊員の氏家さんと私が書いたレポートが
JICAウズベキスタン事務所のサイトにアップされていました。

JICAウズベキスタン事務所
トピックス&イベント情報
http://www.jica.go.jp/uzbekistan/office/information/event/20130815.html

「51時間電車の旅1」というエントリーは
アルマティで着いたところで終わっていますが
メインはこのイベントでした。

2013年7月13日土曜日

新5000スム札と、独立時の通貨

ウズでは、物価がどんどんあがってるのに
最高額紙幣が1000スムなので

たとえば300ドルはこんな感じ。


財布は二つ折りとか使えないので
キルギス土産のポーチが大活躍。


数えるのも持ち運ぶのもめんどうなので
在住日本人の間では、高額紙幣が待ち望まれていた。

その待望の新紙幣5000スム札がコチラ!


7月1日に発行との報道があり
8日に会ったウズベク人が「給料に入っていた」と言って
1枚両替してくれた。

どうせなら1万スム札を出してほしいんですけど
出回れば財布もだいぶ軽くなりそう。

☆ ☆ ☆

そして昨日、この国の独立時の通貨について聞く機会があった。

ソ連全土(ウズベキスタンも含む)で流通していた旧ルーブルは
ロシアが新ルーブルを発行した1993年に、とつぜん使えなくなった。
当時、ウズベキスタンでも、旧ルーブルが使われていたが
早く新通貨を発行しないと
ロシアから使えない旧ルーブルが大量に流入してしまう。
しかし、そんなに急に新通貨は発行できない。

そこで仮の通貨「スムクーポン」が発行され
旧ルーブルは廃止となった。

旧ルーブルを家に貯め込んでいたタンス預金派は
一夜にして財産が紙くずになってしまい
大きなショックを受けたそうだ。
そりゃそうだ。

一方、銀行に預けていた分は
スムクーポンとして引き出せたようだが
この話をしてくれた人は、1年間貯めた給料をスムクーポンとして引き出して
そのお金で果物や野菜を買ったら
一度で使い切ってしまったという。
つまり、タンス預金も銀行預金も、とつぜん消えてしまったようなものだ。

仮だとわかっているスムクーポンを貯め込む人は、もういなかった。

とはいえ、現金をまったく持たないわけにはいかない。
みんな、ある程度は持っている。
そこで毎週末、こんなウワサが流れる。
「週明けにスムクーポンが廃止されて新通貨が出る」
「スムクーポンはとにかく使い切ったほうがいい」
何も買うべきものがないと言えば
肉でも買っておけと言われたそうだ。
そして無理やり使いきるのだが、実際には新通貨は出ない。
そんなことが半年も続いた。

オオカミ少年のウソも最後には現実になったように
スムクーポンも、何回もの廃止のデマの後、本当に廃止された。
昨日まで現金だった今日の紙くずは
誰にも見向きもされないまま、風に舞っていたという。


☆ ☆ ☆


新しいスムが発行されたとき
1ドルは19スムだった。
地下鉄は20チン、つまり0.2スム。
月給は20ドルだった。

今は1ドル約2100スム、
地下鉄は800スム、
月給は200ドルである。


給料は400倍、
物価は4000倍。


新札を手に入れた週に聞いた
昔の、といってもたった20年前のお金の話。

2013年7月9日火曜日

「鎌倉朝日」に寄稿しました

以前に寄稿した原稿がネット上で読めるようになっていました。

鎌倉朝日 バックナンバー
http://www.kamakura-asahi.com/back.htm

5月1日号の6面「世界で羽ばたく人たち」の欄です。

無意味に重いので、ネット環境が不自由な人は見なくて大丈夫です。
最初から脱字してるしね。
「こんちは」って、体育会系じゃないんだから……。あーあ。

2013年6月26日水曜日

1周年(первая годовщина)

去年の6月25日にタシケントへ来たので
今日でちょうど1周年だ。

昨日、ロシア語のレッスンで
まさに「去年」「今年」「来年」などの言い方を習って
QA練習で「いつタシケントへ来ましたか?」と聞かれた。

先生、去年の6月25日に来たんですよ、私たち!
ちょうど1年なんですよ!

と言ったら
「年月だけじゃなく、日にちまで言うなら
 変化の仕方が変わる」とか返されて
いや、もう、何なのロシア語の格変化。

ちなみにロシア語で1周年は
「первая годовщина(ピエルバヤ ガダブシーナ)」
というらしい。

先生のソフィアは続けて
「それであと何年いるの? 1年?
 2、3年がちょうどいいのよね。
 それで新しい場所へ移るのよ」
と言った。

確かに。
毎日新しいことを体験しながら季節が一巡して
だいたいわかったところでもう1、2年過ごすくらいが
ちょうどよさそうだな、というのが今の実感。

じゃあ次は?

2013年5月10日金曜日

51時間電車の旅1

3月にウズベキスタン日本語弁論大会が行われた。

日系企業が少ないウズベキスタンでは
スポンサーをつけることは難しく
費用はほとんど国際交流基金からの助成金に頼っている。
だから「入賞者には豪華賞品が!」
みたいなわけにはいかないが
6位までの入賞者にはちょっとしたごほうびがある。
中央アジア弁論大会への参加だ。

中央アジア弁論大会は、ウズベキスタン、カザフスタン、
キルギスの3カ国の持ち回りで行われていて
今年はカザフスタンのアルマティで開催された。
ウズベキスタン大会で入賞した6人の大学生は
ウズベキスタン日本語教師会の経費で
アルマティへ行くことができる。
多くのウズベク人は、普段、旅行なんてしないから
これが人生初の海外(実際には海は越えないけど)
という学生も多い。

私は幸運にも引率としてアルマティへ同行することになった。
しかしウズベキスタン日本語教師会は
慢性的な財政難なので、
6人の学生にたっぷり交通費を出すことができない。
私は、実は教師会の会計も務めちゃったりしているので
アルマティまでいくらで行けるのか調べた。
飛行機はダメだ。1人300ドル以上かかる。
国境までタクシー、越境後にバスという手もある。
これはかなり安いが、越境に時間がかかるし
バスは予約できないから当日見つけなければならないし
運が悪ければバスで席がないまま一晩中乗ることもあると言われた。
そんな運任せな旅では困る。

そこで私たちが選んだのが電車である。

行きはタシケントからロシアのノヴォシビルスクまで
帰りはアルマティからウズベキスタンのヌクスまで走る
長距離電車を利用することになった。
タシケントからアルマティまで27時間、帰り24時間
往復51時間の電車の旅である。

丸1日以上かかるので、集合は大会2日前の5月2日13:30。
男子学生4人、女子学生2人、
応援の日本人留学生ちかちゃん、引率2人の
9人でアルマティをめざす。
車内の食糧事情がわからなかったので
ノン(ウズベキスタンの大きなパン)や水などを買って乗り込んだ。
14:34、定刻通り出発。

電車の座席には何種類かあるようなのだが
私たちは、買えるなかで一番安い寝台席に陣取った。
ちなみに行きは21万6709スム(約78ドル)、
帰りは12万6579スム(約46ドル)である。

私たちは二段ベッドが向かい合わせになった
コンパートメント2つとベッドをもう1つという陣容。
しかし「コンパートメント」といっても
通路との間には壁もカーテンもなく
反対側の窓際にも二段ベッドがある。
なんというか、非常に一体感のあるつくりである。
みんな私たちをジロジロ見るし、よく話しかけてくる。



乗ってすぐにパスポート回収。
そして税関申告書へ記入。
ウズーカザフ国境はタシケントから近いので
すぐに国境前の駅に到着し、出国審査が始まった。

審査官と麻薬犬が荷物をチェックしにきたり
申告書の書き方が違うと書き直させられたり
ダラダラと時間が過ぎていく。


しかし、暑い。


アルマティは寒いと聞いて、防寒ばかり考えていたが
タシケントはもう初夏の陽気なので暑いのである。
しかも窓は開かないし
(開く窓もあるが、私のところの窓は開かない窓だった)
旅行でテンションMaxの若者が6人も座ってるし
(4人用のスペースなのに)
出国審査で2時間、ちょっと走って、カザフの入国審査で2時間、
電車が動かないから、ひたすら暑いのである。

「あー、ビール買ってくればよかった」
「買ってきてもぬるくなっちゃうからね。冷たいの飲みたい」
「新幹線のさ、車内販売が来たらいいのにね」

そんなことを話していて、
そろそろ電車が発車しようかというとき
カザフ人のおばさんたちが乗り込んできた。

「コーラ! ウォッカ! ビール!」
「コーラ! ウォッカ! ビール!」

ビール!?
急いでおばさんを止めて、冷えているか確認する。
すごい! ちゃんと冷えている!
ウズベキスタンではビールが冷えていないこともあるので
なおさらうれしい。1本5000スム(約1.8ドル)。
もちろん買い求めた。
無事カザフスタンに入国したことを乾杯しよう!
みんな、すごくいい笑顔だ。

思えばここまで長かった。

電車のチケットを買うために3時間半たらい回しの刑にあったり
学生のパスポートが出発前日まで発行されなかったり。
毎日、大小さまざまな問題があった。
しかし、こうして6人全員を連れて国境を越えることができた……。

と、しみじみビールを飲もうとしたら、警察がやってきた。

「ここで酒を飲むのは禁止だ。飲むなら食堂車へ行きなさい」

うぐぐ。おばさんがあんな絶妙なタイミングで売りに来たのに
その場で飲めないとは、何たる孔明の罠。
これから乗る人は気をつけてください。


しかし、まあ、ウズベキスタンの学生は
そもそも頻繁にお酒を飲まないので
ビールがなくてもおしゃべりは弾む。
だんだん周りの席のおじさんたちも輪に加わって
大勢でおしゃべりして、さらに歌や踊りまで飛び出した。
ウズベク人のこういう陽気なところは本当にステキだ。

「オレたちはしょっちゅうウラジオストックとタシケントを往復してるんだ。
 いまからいっしょにウラジオストックへ行こう。
 あそこからなら、すぐに日本に帰れるぞ」

いえ、私たちはアルマティの弁論大会に行くのです。

「そうかそうか。がんばれよ!」

そして、学生たちは、ゆでたまごを買ったのに塩がないと言えば
どこからともなく借りてきて
コルバサ(サラミ?30センチくらいある)を切るナイフがないと言えば
どこからともなく借りてくる。
「おしょうゆ切れちゃったから、お隣さんから借りてきて」みたいな
3丁目の夕日のような世界である。

アルマティに着いたのは、予定を15分過ぎた5月3日17:25。

車内でご近所だったおじさんたちが
わざわざ電車を降りてお見送りしてくれた。
彼らが学生たちと、ウズベク式に1人ずつ握手するのを見て
「ああ、ウズベク人だなあ」と思った。

着いてみれば、27時間は、案外短かった。
そしてこの時間があったからこそ
ウズベキスタンの学生たちの間にチームワークが生まれたと思う。

さあ、明日は中央アジア弁論大会です。

2013年4月6日土曜日

活動先に関連するPR動画がアップされました。

Nagoya University Uzbekistan Office
http://youtu.be/CDEqXXLUHsk


文部科学省のプロジェクト「グローバル30(国際化拠点整備事業)」
ウズベキスタン事務所の紹介ですが
タシケントで撮った動画の半分は、私の活動先で撮影しているようです。
いっしょに働いている先生方も登場していました。

2013年3月23日土曜日

タシケントの春


「お春、おめでとうございます」
というメールが、3月1日に学生から届いた。

この国では3月1日から春になるらしい。
その日、同僚のS先生はピンクのブラウスだったし
(「今日から春だから」と言っていた)
街には、桜によく似た杏の花が咲き始めていた。

 ↑桜によく似た杏の花

3月6日には、8日の国際女性デーにちなむイベントが
うちの大学で開催され
ブハラの小学校で音楽を教えている隊員が特別出演。
「さくら」の編曲をピアノで弾いてくれた。
素晴らしい演奏に拍手を送って外に出ると
桜の花びらが舞いそうな春の陽気であった。

しかし。

7日は朝から土砂降りの雨で、午後から雪になった。
雪はそのまま9日の朝まで降り続け
タシケントを冬景色に戻してしまった。

梅の花が咲いたあとで雪が降ると
その年は梅の実があまり穫れないと、親がよく言っていたが
杏の花は雪に降られても大丈夫なんだろうか。

そして次の週は、「春」を通り越して「初夏」の暑さがやってきた。

同僚のA先生は半袖シャツ。
授業中には学生に「エアコンをつけてもいいですか」と聞かれた。

まさかこのまま夏にならないよね?と思っていたら、
その後は、ちょっと肌寒かったり、
服の選択を間違うと暑かったりする程度の
春らしい日が続いている。


そして昨日は、イスラム教ウズベキスタンで
最大の年中行事「ナブルーズ」だった。
だから今週は、いたるところにナブルーズを祝う看板やら、
国旗やらが飾られているし
人々の空気も春らしく浮かれている。
冬が厳しいからこそ、春の訪れがうれしいのだろう。

 ↑アミール・ティムール博物館前に飾られたナブルーズを祝う看板

「このまま夏にならなければいいの」とも思うが
私としては、自分がウズベキスタンに来た夏こそが、
この国を象徴する季節であるように思えて
早く夏になってほしい気もしている。

2013年2月26日火曜日

ロシアのTV番組って


ロシアのチャンネルを見て
「わー資本主義だー」って思った。

まだロシアのチャンネルを見始めたばっかりで
ただの第一印象なんだけどさ。

とにかくね、華やかで下世話でせわしない。
ウズベキスタンの番組とはぜんぜん違うよ。

音楽のPVなんて、めっちゃ美人のお姉さま方が
胸もお尻もバンバン出して
腰をくねくねさせながら踊っててさ。

CMでは、香水とか化粧品のが印象に残った(めいべーりん)。
そういえばウズベキスタンでその手のCM、見たことない。
(私が気づいていないだけか?)
消費社会の段階として
衣食住→ファッション→健康、
みたいな話を聞いたことあるけど
ウズベキスタンはまだファッションの段階に
到達してないのかも。
オシャレ好きな女性は多いけど、消費という視点ではね。

そして、私は、自分自身はちっとも華やかじゃないくせに
そういう都会的な世界が大好きなんだってことを思い出した。

2年後、東京はまだ華やかで下世話でせわしない街だろうか。

都会の映像を見ながら、将来のこととかちょっと考えたよ。

2013年2月19日火曜日

スムをドルに替えるのは禁止です


2月1日から、ウズベク人は現地通貨スムを
外貨に変えることができなくなった。

銀行窓口での外貨現金交換を停止、カード入金に限定 (ウズベキスタン)
http://www.jetro.go.jp/biznews/5114558674748

スムを外貨にできないって
じゃあ、海外に行く人はどうするの? と思ったら
カードに入金されるので、海外ではそれを使うらしい。

なんというか、ずいぶん思い切った施策である。


ちなみに、商品やサービスの対価をドルで払うことも元々禁止だが
より厳しくチェックされるようになったと聞いている。

☆ ☆ ☆

なぜ外貨の現金交換を停止したのだろうか。


ウズベキスタンの通貨については過去にチラリと書いたけれど、
公式レートと闇レートがある。

2012年6月末、私がウズベキスタンに来たときは
ホテルで両替して、50ドルが95400スムになった。
いまそのときの領収書を見たんだけど
手数料も交換レートも書いてない。
あれ? 領収書ってそういうの、書いてないんだっけ?
まあ、とにかく、当時の公式レートは1ドル=1800スムくらいだった。
でもバザールなどで声をかけてくるような両替商は
1ドル=2800スムで替えていた。

闇両替は違法だが、ウズベキスタンに住んでいる多くの人は
1ドル=2500~2800スム、という認識でいたと思う。
(時期によって変動がある)

レートが2つあるというのは、もちろんいい状態じゃない。
それを改善するために、外貨の現金交換禁止となった、という説もある。

☆ ☆ ☆

ウズ→ドル禁止に伴い、闇両替の取り締まりが厳しくなっている。
これまでバザールの入り口などに
「ダラー、ダラー」と通行人に声をかける人たちがいたが
彼らが、両替の現場をビデオカメラに撮られて続々と逮捕されたそうで
最近ではまったくいなくなったと聞いた。

そうしたあれやこれやの結果、
現在の公式レートは1ドル=2000スム程度、
タシケントの闇レートは、1ドル=2200スム程度というウワサだ。
つまり公式レートと闇レートの差が小さくなっている。


冒頭で紹介した記事の結びは、次のようになっている。

 この決定によって国民が外貨の現金を所持することは困難になるため、
 一時的な変動はみられても、
 今後、自国通貨スムの外貨交換レートは下落していく可能性が高い。

「自国通貨スムの外貨交換レートは下落していく可能性が高い」とは
スム安になるということだろうか。

外国人のひらいとしては、スム安、ありがたいですけどね。うん。

2013年2月14日木曜日

バレンタインデー中止のお知らせ2013

去年の2月はまだ日本にいたのだが
先輩隊員のこんな記事を読んで驚いていた。


バレンタインデー中止のお知らせ(世界も、自分も、変えるシゴト。)
http://braille.cocolog-nifty.com/blog/2012/02/post-afd5.html

元の引用記事がなくなっているので孫引き。
ウズベキスタン当局は24日、バレンタインデーを祝う主旨のコンサートその他のイベントを中止させた。首都タシュケントの人々は、代わりに16世紀のムガル帝国初代皇帝バーブルの詩の朗読を楽しむことができるそうだ。
キリスト教のお祭りであるバレンタインデーを祝うと
ウズベキスタン本来の文化を損なう。
代わりに、2月14日が誕生日の英雄・バブルをまつろう、ということらしい。

今年もtwitterで以下のツイートを見つけた。
ウズベキスタンで今年からバレンタインが禁止になった。キリスト教徒もバレンタインを祝ってはいけない。学校でカードなど送ろうとすると先生に怒られることになった。バブール(ウズベクの偉い人)の誕生日だと認知させることになった。(@shigemuratoshio) 2013年2月10日
日本では、モテない人たちがネット上で
「クリスマスなんて中止だ!」「バレンタインデーなんて中止だ!」と
騒いだりするが
ウズベキスタンでは本当に中止になっているらしい。
すごい。「虚構新聞」を超えている。



今日、学生(大学1年)にも確認してみた。

ひらい:明日は2月14日でしょう? 何の日ですか?
学生1:バブルの誕生日です。

おおー。
先にバブルの誕生日が出てきたことに驚いた。

ひらい:日本ではバレンタインデーですよ。
学生2:はいはい、先生、ウズベキスタンもバレンタインデーです。
↑これはタシケント出身の都会っ子で彼女持ちの発言。

ちなみにウズベキスタンでは
・男の人が女の人にあげても、女の人が男の人にあげてもいい。
・あげるものは、花でも手紙でも、何でもいい。
とのこと。

「ウズベキスタンではバレンタインデーをしてはいけません、じゃないですか?」
と聞いてみたのだが、「まあ、別に……」という感じの反応だった。

あれ?

1年生は日本語の語彙が少ないので、やりとりに限界がある。
先輩にも聞いてみよう。

上級生の男子学生をつかまえて聞いてみた。

ひらい:バレンタインデーってウズベキスタンではやらなくなったんじゃないの?
上級生:私にはバレンタインデーはありませんよ。彼女がいませんから。
   (パソコンを取り出してカタカタとたたく)

んー。私の周りは日本とあまり変わらない感じです。

2013年2月11日月曜日

昨日のトップニュース

「ウズのニュースはお花畑」と
日本で会った人が言っていた。

日本のニュースは、不況、リストラ、自殺率など
暗い話ばかりが続く。
そんななか、最後に1つか2つ
「今日、○◯市で世界記録に挑戦するため
 ○○人が巨大○○を食べました」みたいな
ほのぼのとした話題が紹介されて
子どもが「おいしかったー」とコメントしたりする。

日本では申し訳程度に添えられるほのぼのニュースだが
ウズのニュース番組は、最初から最後までそんな感じである。

昨日、友だちの家でテレビを見ていたら
夜のニュース番組のトップニュースは
アリシェル・ナボイ生誕祭についてだった。

アリシェル・ナボイは15世紀の詩人で
今もその名を冠した町や劇場があるような国家的英雄である。


↑巨大アリシェル・ナボイ像。今年の正月に「ナボイ」という街で撮影。

で、そのナボイ様の誕生日だから
タシケント、ナボイ、アンディジャン……と、各地で
みんながお祝いしましたよー、という映像が流れて
利発そうな子どもが何か言ったりしていた。
日本で言えば、「今日は菅原道真の誕生日だから
 太宰府では地元の子どもたちが学業成就のお参りをしました」
みたいな話題である。

それがトップニュース。
しかも延々と続く。

15分経ったところで、いっしょに見ていた友だちが
「つまらん!」とチャンネルを変えてしまった。

不況ニュースの国・日本から来た身としては
「現実はお花畑じゃないのに、そんなことでいいのか!」と
思わないこともないけれど
一方で、みんなで暗い話ばかりしているよりも
よっぽどいいのかもしれない、とも思う。

2013年1月17日木曜日

アンズの種割り人形

ブハラ名物の杏の種をポリポリとかじりながら
ヒライは考えた。

(実にめんどくさい。これは専用の器具が必要だ!)

ブハラのバザールでは
炒って塩をふった杏の種が売られていて……

食べるときは、殻の割れめに、
別の殻を差し込んでこじ開けて
中身を食べるのだが……

割れめがほそすぎて殻を差し込めない種も多く
ヒライは歯で噛んで開けていた。
そんな割り方をしていては、歯が欠けるのも時間の問題である。

そもそも……と、ヒライはポリポリ考える。

日本人は細かい用途に対応したアイデア商品が好きである。
たとえば、昨冬からヒライが愛用している手袋は
親指、人差し指、中指の先だけ電気が通るようになっていて
手袋をしたままスマホがいじれるというものだ。
こういう「かゆいところに手が届く」商品は
ウズベキスタンであまり見かけない。

この杏の種だって、杏の種割り人形を開発し
セットで売れば、新しいブハラ土産となるのではないだろうか。

(杏の種割り人形は2つの部分を備えていなければならない)

ヒライはさらにポリポリ考える。

(すなわち、割れ目のない種にヒビを入れるためのペンチ部分と
 細い割れ目をこじ開けるための、ギターのピック的な部分である)

(そうギターのピック的な……)

そこでヒライは思いつく。
なぜか家にあるドライバーセット。
何かを修理しようとしたら、先に壊れてしまいそうな
アイツが使えるのではないか?




パカッ

いともかんたんに、そしてきれいに割れる杏の種。

(おおー、これは便利!)

ヒライはうれしくなった。

そして虚しくなった。
杏の種割り人形のアイデアがムダになったからである。

……ポリポリ。

こうして今日もタシケントの夜は更けていく。